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      「新常態時代の企業法務」第2回。テレワークの推進にあたりペーパーレス化への取組みを進める企業が増えています。その中で見落としがちな文書電子化に係る法律と脱ハンコにおける注意点について解説します。
      本連載は、日経産業新聞(2020年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

      新型コロナウイルス感染症を受けたテレワークの推進にあたり、ペーパーレス化に取り組む企業から問い合わせが増えている。その中で検討から抜け落ちやすい、または取組みの力点に過不足が生じやすい2点について解説する。

      検討から漏れやすいものとしては文書の電子化における法規制対応がある。企業で管理する文書には法人税法や会社法などにより、法令上書面の作成・保管が義務づけられる文書がある。各文書の電磁的保存のルールとして、e-文書法や電子帳簿保存法があり、これらの法規制は書面や帳簿書類の種類によって、電子データとしての保存の可否や保存方法に一定の制限を設けている。このため、全社内文書を対象に漫然と電子化しようとすると、文書の作成保管義務違反を問われる可能性がある。
      業法や商慣習で書面化が要求される文書もあるため、対象とする文書を棚卸・再整理し、電子化が可能な条件を確認したうえで、規制上の要件に沿った手続きをとり、電子化を進める必要がある。
      また、文書データの改ざんの未然防止・早期発見などにかかる内部統制の構築・運用も義務付けられている。これ以外のリスクについても念頭に置き、部分最適に陥らないような統制を効果的に整備・運用する必要がある。

      取組みの力点に過不足が生じやすいものとしては脱ハンコ対応がある。法律文書や組織の公的文書をテレワークで作成・保存する場合、証拠力を担保する自署・押印に代わる手段を備える必要があるとして電子署名や電子サインを検討することが多くなっている。
      一方、民間における押印慣行の見直しに向けた自律的な取組みが進むことを狙って、内閣府・法務省・経済産業省が公表した「押印についてのQ&A」で、民間企業や官民の契約書で押印は必ずしも必要ないとの見解が明確に示されたことに注意が必要である。このQ&Aでは、文書の成立の真正を証明する手段の例示として、電子メールのやりとりの保存を明記している。
      押印・署名については、証拠力の担保という法的観点に目が行きがちだが、注意すべき点はそれだけではない。業務の性質・目的について改めて振り返り、たとえば社内手続きによる誤った契約書への押印、無権限者による締結などの防止など、法的観点以外の効果にも目を向けて、契約関連手続きをいま一度見直すことが肝要である。

      押印についての国の見解の一部
      Q. 押印しなくても法律違反にならないか?A. 必ずしも契約成立の必要な要件とはされていない
      Q. 文書成立の真正を証明する手段の例は?

      A.

      (1)継続的な取引関係がある場合

      • 取引先とのメールの送受信記録の保存

      (2)新規に取引関係に入る場合

      • 契約締結前段階での本人確認情報の記録、保存
      • 契約の成立過程にかかるメールやSNS上のやり取りの保存

      (出所)内閣府・法務省・経産省「押印についてのQ&A」を基にKPMG作成

      執筆者

      KPMGコンサルティング
      シニアコンサルタント 村上 未来

      日経産業新聞 2020年9月16日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

      KPMGコンサルティング

      戦略策定、組織・人事マネジメント、デジタルトランスフォーメーション、ガバナンス、リスクマネジメントなどの専門知識と豊富な経験から、幅広いコンサルティングサービスを提供しています。

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