はじめに
現代社会において、大学、企業、政府が掲げる理想の人物像はおおむね一致しています。自律して考え、不透明な社会のなかで自ら未来を切り拓くことのできる人、といったものです。しかし、社会は、本当にそのような人を育てているでしょうか。
大学では、育成すべき能力を設定し、その能力をいかに高め、評価・保証するかという教育改革が進められています。企業はそこで育った学生を選抜し、入社後はさらに必要な能力やスキルを研修によって高めます。社会に出れば、組織の目標や評価のもとで仕事をし、経験を重ねていくことになります。
「自律して考える人を育てたい」という理想を掲げながら、実際に社会が育てているのはどのような人なのでしょう。本当に自分の頭で考える人が育つ仕組みをつくっているのでしょうか。
本連載では、大学、企業、社会に見られるさまざまな現象から、私たちが掲げる理想と、実際に人を育てている仕組みとの間に何が起きているのかを観察します。そして、「自律して考え、未来の価値をつくる人」を育てるとはどういうことか考えます。